3月9日
1年前のわたしはもうずっと辛くて泣き疲れた状態で、ベッドに転がるいもむしのようであり、もう相当な底に落ちてしまったのでちょっとのことではそれ以下に落ちないような、とにかく悲しみの深いところにいた。
なので10日に迫った前期試験の合格発表(当然不合格だったのだが)に対する関心もそれほど強くなく、考えることといえば、いつまで生きて、いつ死ぬのか、そんなことばかりだった。
後期試験のあと、その足で気がすすまないまま部屋を決めにいった。
ひとり暮らしは楽しみだったのに、今は全く生きていく気がしない。
数日後には、2年前にもらっても良かったような合格通知を見て、ちょっと泣きながら荷物をまとめて、3月27日、少し急ぎ足でこの部屋にやってきたのだった。
何とか生活はしていた。
でも、やっぱりからだも頭も悪くなっていた。麻痺した全身で日常の綱渡りをしていて、綱が切れそうになると学校のトイレで泣いていた。あとは大学生しか乗らないような路線バスの中。命からがら帰り着いた部屋で、リノベーションしたばかりの真っ白な扉を眺めながら。
ずっと生きてはいたけど、しびれる手で豆をつかむような生活はなかなか変わらない。
箸から豆がぽろぽろ落ちる。ぽろぽろ泣く。
そんな中で、人間としてしっかり一歩踏み出すほどの元気はなくても、いもむしのまま流れの方へすこし体を傾けることができたのは、ものすごく幸運なことだったのだろう。
いろいろな偶然がうまく重なって、わたしは逃げ道を作ることに成功した。
わたしは1年たらずで、この部屋を出ることになったのだった。
初めて一人暮らしをした部屋。家賃が高くて部屋は寒くて住人もうるさかったけど、きれいでおもしろいアパートだったな。
感慨深い気持ちもそこそこに、ギリギリで引っ越しの準備を進める。
母に深夜まで荷造りを手伝ってもらったあと、明け方にメールが届いた。
ーー
昨日、いや今日未明、
高速での帰り道、前方向に、月と木星がずっと見えていた
一年前の4月は、火星がずっと見えていて、この状況に言い様のない不安を感じ、涙しながら帰路についたのを思い出した
月と木星は吉兆である
きっといいことある
そう思った帰り道だった
ーー
去年は、母が来たり帰ったりする度に悲しいことを思い出し、そういえば毎回泣いていたなあ。
でも今は、あまりなにも思い出さずにいられる。いつ死ぬのかではなく、ちゃんと春の服のことなどを考えている。
雑レシピ
ある程度料理経験のある人による、ある程度料理経験と勘のある人のためのレシピ、というより料理の記録
①だしをとる。
乾燥昆布ときのこ類(今回は冷凍しめじと乾燥しいたけ)を水に入れ火にかける。乾燥しいたけはキッチンばさみで適当な大きさに切ってから入れた。
沸騰する前に昆布を取り出す。
②野菜を切る。
今回は白菜・大根・にんじん・さつまいも・ねぎ・ゴボウ。スープジャーにいれたかったのと、煮込みの時間を減らしたかったので野菜は小さめに切った。
ゴボウはいちおう簡単にアク抜きした。前回その作業をとばしたら汁が渋くなってしまったので。
さつまいももいちおう水にさらした。台所周りとまな板の上がてんやわんや。
③根菜から鍋に入れる。
今回はにんじんと大根とさつまいもとゴボウ。弱火でしばらく様子を見る。ゴボウのアクが出てきたら取り除く。
うっかりするとふきこぼれる。
④白菜の白い方を入れる。
⑤豚肉をいれるのを忘れていた。小分けの冷凍豚肉を入れる。
ついでに少し塩と醤油も入れる。
⑥白菜の青い方も入れる。ねぎはどうするか迷ったけど、時間がなかったのでとりあえず一緒に入れた。
⑦弱火でしばらく煮込む。
豚肉の冷凍がとけてきたら適宜箸などでほぐす。
⑧火を止めて味噌を溶かす。
味見。
⑨完成。おいしい。
⑩2月28日が賞味期限のこんにゃくを使いたかったのをすっかり忘れていた!
パン屋のパン
パン屋のパンはまじでやばい。全部おいしそう。
例えばバイト前にうっかりパン屋に寄って、バイトの休憩中と夜ごはんと、うまく行けば明日の朝くらいまで持つかな? と思ってパンを3つ4つ買うじゃないですか。全部なくなるの。その日の休憩の間に。
太るし食費もかかるしこれはさすがに良くないと思って、買うパンの個数を減らそうとするんだけど、どうがっばっても減らせないのです。パン屋のパンはおいしそうだから。
だってパン屋にはだいたい10種類~30種類くらいパンが並んでいるんですよ。その中から3つを選ぶのだって、相当な努力が必要だと思いませんか?
中には焼き立てのパンや新商品もあります。もちろんお気に入りのパンや、前からずっと買ってみたかったパンもあります。その中で、一応値段も考慮しながら3つにしぼったの。相当がんばったと思う。
まあ、最近は昼前に起きて、あまりちゃんとした食事をとらないままバイトに向かうこともあるし、夜は疲れ切っていて、食事を用意する気力が起きないこともあるし。一食くらい食べ過ぎちゃってもいいじゃない。
そう言いきかせて自分を許しています。
でもだめです。
冬の朝はからだが冷えるので、コーヒーをいれたりスープを飲んだりしたくなるでしょう。からだが温まって胃が動いてくると、当然パンなど食べたくなりますね。食べましょう。朝ごはんを抜くのはとても良くないから。
バイト帰りの夜は疲れ切っているので、自炊をする元気がないの。でも当然お腹は空いている。最近は流し下にチョコレートを常備しているし、もちろん冷凍庫には食パンもありますね。食べましょう。カロリーはいきるのに必要だから。
だめなんです。
これでは一日三食のまま、ただ全体の食べる量が増えただけです。でも、目の前にパンがあって、それを食べるのは当たり前のこと。
目の前にパンがなければ、つまりパン屋に行かなければいいのでは?
そんなこと、できるはずがありませんでした。
だってパン屋のパンはおいしそう、パン屋のパンはやばいから。
パン屋のパンが、肥満とか、よけいな食費とか、よくないことにつながってるのは分かってるんです。
でもパン屋のパンはやばい。
他のことがどうでもよくなるほど、パン屋のパンはおいしい。すばらしく、そしてやばいのです。
ねこの日だった
2月22日はねこの日で、なので一日中にゃーにゃーいいながらごろごろしていてもきっと許されると思った。
久しぶりの休日だったのに、アパートの屋上で工事があって朝から外がうるさい。でも、それが工事だとしばらく気づかなかったほどにはこのアパートは普段から騒がしいのである。
屋上にはソフトバンクの電波スポットができるらいい。スポットができたらどうなるんだろう。キャリアのケータイを使っていないのでよくわからない。
外は天気がいいようだけれどわたしは何もやる気が起きない。久しぶりに母が来るはずだったのに、だるくてそれも断ってしまった。
今日も何もかもだめだとおもう。
ぶつぶつ言いながら布団を敷き直した。工事音を聞きながら、毛布の中でねこのようにまるくなっている。